2024年度試験から行政書士試験制度の一部がかわります。
平成18年(2006年)ほど大きな改正ではありませんが、対策が変わってきます。
今回は初心者・初学者向けの行政書士試験対策。
どういった試験で、何を、どのように、どのくらい勉強していけばよいのかの話です。
はじめて法律を学ぶ方を「初学者」と呼びます。
この話では、初めて行政書士試験を受ける方向けの対策だと考えていただいて問題ありません。
直近で受験した方向けの最新対策は別の記事で(話すべきことがかなり変わってきますので)。
新制度で変更がかかる部分はあくまで予想ですご了承ください。
合格率1桁になる可能性も、無難にまとめてくる(合格率10%前後になる)可能性もどちらもあり得ます。
また、これ幸いと、ルールの範囲内で傾向変えてくる可能性も0ではありません。
どうなるか終わってみないとわかりません。
本気で話しますが、話半分に聞いてください。
何を勉強すべきなのか?
何を勉強すれば効率よくすすめていけるのでしょうか?
まずは、「相手」を知る必要があります。
この「相手」とは行政書士試験そのものをさします。
相手を知るために過去問が重要です。
どんな人に合格してほしいのか過去問は伝えてくれます。
ただ、過去問の声が聞けるようになるには、一定以上のやりこみが必要です。
初心者は今の段階で、深く「相手」を知ることは難しい。
ですが、制度を知るだけでも多くのことがわかります。
どんな試験なのか?
まずは制度を確認。
★概要★
- 11月第2日曜日の13~16時。
- 受験資格はない。誰でも受験可能。
- 過去平均で、およそ5万人が受験。
- およそ5.000人が合格。
- 300点満点中180点以上で合格。
★出題形式★
- 5肢択一(4点)‥‥216点
内:法令160点、基礎知識56点 - 多肢選択式(2点)…24点
- 記述式 (20点)… 60点
- 計300点
★出題科目(出題順)★
- 基礎法学
- 憲法
- 行政法
- 民法
- 商法
- 会社法
- 基礎知識(旧一般知識)
★合格基準★
制度的には3つあるが事実上2つを満たせばよい。
- 総得点が180点以上
- 基礎知識が56点中24点以上(14問中6問以上)
一応、法令科目(記述・多肢選択含む)が50%以上という基準もあるが、仮に基礎知識が満点の56点であったとしても、法令科目が50%未満の場合180点に届かない。
各科目の比重
行政書士試験は、すべての科目が均一に出題されるわけでない。
(記述・多肢込)配点の多い順に
図では旧制度の一般知識で表記してますが、配点は変わりません。
- 行政法‥‥112点
- 民法 ‥‥76点
- 基礎知識…56点
- 憲法 ‥‥28点
- 商法・会社法…20点
- 基礎法学 ‥‥8点
何を勉強すればよいか、均等ではダメ
どの科目もバランスよく学習してはいけない。
配点を見ればわかりますが、バランスよく出題されません。
合格点は180点以上ですので、行政法と民法が満点であれば合格点を超えることになります。
基礎知識で24点未満は不合格(通称:足切り)ですので基礎知識も重要。
逆に、配点の少ない憲法・商法会社法・基礎法学の3科目合わせて基礎知識と同様の配点にしかなりません。
重点学習科目
今の時点では行政法・民法・基礎知識(+憲法、後述)が重要だということがわかれば問題ありません。
✅行政法
✅民法
✅基礎知識
今現状では、「そりゃそうだよね」と思うかもしれませんが、試験直前の9月・10月になってくると忘れる人が後を絶ちません。
配点の低い科目は捨ててよいのか?
憲法、商法会社法、基礎法学は合計でたったの56点にしかなりません。
100点満点のテストに直すと、18点程度、20%にも及びません。
合格基準が60%で、足きりにも関係ないので捨ててでも主要科目に注力したほうが良いような気がしませんか?
では、マイナー科目は捨ててよいのでしょうか?
答えはNOです。
- 勉強が進めば進むほど主要科目だけで合格点を満たすことが難しいと感じるようになる。
- 憲法は行政法との関係性が強く、極端に言えば一連の科目として考えてもよい。
- 出題傾向がある程度絞られているため、抑えるべきところだけ抑えればあと一押しの点に結び付く可能性が高い
結局全部勉強する必要があるという‥‥‥
全く何もしなくて良い科目はありません(何もできない科目もありますが)。
力の入れ具合が違うのです。
配点は多くないが憲法大切なのです。
憲法の配点は28点、基礎知識の半分でしかありません。
しかし、重要性は基礎知識と同じです。
先程も触れましたが、憲法の考え方が行政法にかなり濃く表れています。
行政法理解のためというのもありますが、基礎知識で高得点を取ることが難しい。
基礎知識で高得点を狙う努力をするなら憲法である程度稼いだ方が効率的。
シンプルに、憲法のほうが努力が点になりやすい。
という理解で(今は)十分です。
基礎知識が厄介
端的に言って、基礎知識で高得点は狙えない。
結果として取れる可能性はありますが、狙ってとるのは難しい。
14問中、足切り回避の6問までは狙ってとる必要があります。
基礎知識に関しては、2024年度試験のキーになる部分ですので、別記事で詳しくお話しします。
できれば、保険も兼ねて+2問の8問まで狙いたいところですが、法令科目の民法・行政法の精度を上げるほうが優先度は高い。
ゴール設定:目標得点
これらを踏まえて、出題傾向や問題そのものの難しさ、対策のしやすさなどから、目標を設定します。
配点(点) | 目標(点) | 目標正答率(%) | |
---|---|---|---|
基礎法学 | 8 | 4 | 50 |
憲法 | 20 | 12 | 60 |
行政法 | 76 | 64 | 84 |
民法 | 36 | 24 | 67 |
商法・会社法 | 20 | 4 | 20 |
多肢選択 | 24 | 18 | 75 |
記述 | 60 | 30 | 50 |
基礎知識 | 56 | 24 | 43 |
300 | 180 | 60 |
先程と配点が違うのは、多肢選択(憲法・行政法)、記述(行政法・民法)を分けたからです。
科目ごとの配点は先程と同じになります。
目標正答率にかなりの差があることがわかると思います。
行政書士試験全体で万能な勉強法があるわけではないのです。
科目や分野によって、過去問周回だけで済むものもあれば、対策がほぼ不可能な科目もあります。
もちろん、ベースとなる考え方はあります。
経験者向けの内容になりますが、記述抜きを狙うなどの他の得点目標は
超重要【逆算式】行政書士試験攻略のための得点戦略 でお話ししています。
初心者向け勉強法
お待たせしました、ここからが本題です。
世の中に多くの勉強法がありますが、多くの土台になっているのが、以下の2つです。
☆その1☆インプット⇔アウトプット
知識を入れる⇔知識を使うをサイクルとして回していく。
記憶の定着、知識の正確性を高めて使える知識に変えていく手法。
インプット・アウトプットの比率は勉強の進行度合いにより変わる。
初期はインプット寄りになりやすく、終盤はアウトプット寄りになる。
アウトプット=問題を解くが最もわかりやすいですが、それだけではない。
人に教える、説明図を書いてみる、など様々な方法があります。
過去問で出ていない≒アウトプットできない、ではないことは覚えておいてください。
☆その2☆反復周回
「複数の問題に手を出すより同じ問題を何度も繰り返したほうが効果的」といわれるように、反復により脳に「大切な情報だ」と認識させることで記憶の精度と定着を高める手法。
どこを反復の基準にするか、また周回速度で、効率が変わってきます。
これらは一方または両方が多くの勉強法で取り入れられている土台、基本的な考え方になります。
ほかにも様々な技法手法があります。
バランスが大事
テキスト読み終わってから過去問演習を始めたら、何も覚えていないことに気が付くでしょう。
自信が持てるまで何回も同じところをやっていたら、いつになっても進みません。
ギャグに聞こえるかもしれませんが、結構やっている人がいます。
大切なのはバランスです。
速度と精度のバランスを取った学習が重要なのです。
モデル
では具体的な実践例を見てみましょう。
あくまで例です。絶対にこれが正解というわけではありません。
step1ー「強行軍」
初期はなるべく小さく区切っていきます。
講座であれば講義一回で一区切り。
講義一回➡対応する問題演習➡次の講義➡対応する問題演習➡
のような形で、交互に進んでいきます。
図のようになることから、「ジグザグ」とか「イナズマ」とか「車の両輪」など様々な言い方がありますが、どれも同じです。
問題はどこまで進むのか?です。
試験範囲すべてではありません。
科目の中でキリの良いところまで来たらstep2へ。
憲法なら、人権と統治
行政法は個別法ごとあたりでよいかと、使用する講座・テキストによりやりやすい形で。
民法の初回は例外になります(科目別で説明します)。
ポイントは、細かいことは気にしない。
この段階ですべてわかる必要はありません。
問題の正解不正解にも意味はありません。
どんどん進む、強行軍で速度重視で進みましょう。
step2
きりの良いところまで終えたら、次はもう一度問題演習。
ここで解説は見ない。
一回目ではできた問題もわからないものが多いと思います。
それでよいのです。
わからない問題は、テキスト・講義を見直して答えを探してみましょう。
解説は探した答えと同じかどうかを見るために使います。
アウトプット➡インプット➡アウトプット➡インプット➡
アウトプットスタートになっている点と、インプットの時間が初回より減っている点がポイントです。
step1とstep2で小さな輪になっていることがわかると思います。
輪をつないで鎖に
step1➡step2➡次に進む➡step1➡step2➡次へ進む
小さな輪つないでいき鎖状に、試験範囲を一通りカバーします。
step3 鎖をつないでワイヤーに
この周回を何回も回して、太く強いワイヤーに編み込む。
問題集一冊を仕上げるイメージ。
この段階から科目ごとの強弱を意識し始める。
step4すぐに錆びるためメンテナンス必須
一度ワイヤーを作ってしまえばそれでよいかと言われればNOです。
すぐに錆び(忘れ)ます。
定期的な補修が必要になってきます。
知識の抜け・もれで強度が強くないこともあり、補強することも必要。
基本は過去問ベースで
問題演習の基本は過去問です。
10年分の過去問(基礎法学・政経社以外)を完璧にマスターしてようやく当落線上です。
過去問が最も効率よく学習を進めるツールですが、それだけで安心できるわけではない。
受験生は誰しも過去問はやりこんできます。必須ですが十分ではない。
とはいえ、過去問は最重要。
科目別
次に科目別にみていきましょう。
基礎法学
過去問対応度 | 低 | |
目標 | 4点 | 50% |
対策が報われない科目。
問題1と2が基礎法学で、初手から受験生の心をへし折るのが役割。
過去問で対応は難しいが、問われ方を知っておく。
現場思考で1問取れたら十分。
憲法
過去問対応度 | 中 | |
目標 | 12点 | 60% |
大きく分けて人権と統治という2分野に分かれる。
人権は判例主体、統治は条文主体で問われる。
憲法は深みにはまるときりがないので、過去問レベルで抑えておく。
行政法
過去問対応度 | 高 | |
目標 | 64点 | 84% |
行政書士試験一番の得点源。
ほぼ過去問からの再出題、努力量に比例して得点が伸びていく。
民法と違い、ある程度詰込みで何とかなる。
高得点が合格への近道なので、多くの時間を投入する科目。
力こそパワー。反復こそ正義な科目。
民法
過去問対応度 | 中 | |
目標 | 24点 | 67% |
合格への鬼門であり、キーになる重要科目。
過去問レベルから司法試験レベルの問題まで幅広く出される。
難問は、ほぼ誰も取れないので気にしなくて良い。
過去問は当然で、さらに過去問周辺の条文までチェックしておかないと歯が立たない。
毎年毎年、本試験後に「司法試験レベル」や「過去問で合格できない」と悲痛な叫びが飛び交う主犯がこの民法。
過去問マストで+αまで必要、だけど沼というとても厄介な科目。
一定のレベルを超えるまで得点が低迷する傾向があり、ある日突然取れるようになる不思議な科目。
最も早い時期からじっくり時間をかけて対策すべき科目。
民法は少し特殊な科目
先程、学習モデルで少し話しましたが、民法は少し特殊です。
なんとなくで良いので、まず全体を一通り終わらしてからstep1に入る。
テキストではなく、一般用の読み物で問題ありません。
宅建合格者や講座受講生は無視してよいのですが、法律はじめての初心者・初学者で独学を選ぶ方には重要です。
他の科目でも有効な方法ですが、特に民法では必須レベル。
商法・会社法
過去問対応度 | 条件付きで高 | |
目標 | 4点 | 20% |
まともにやれば、民法並みの沼。
初心者はまともにやらないのが正解。
過去問からの出題だけで目標点はクリアーできるので、出題頻度が露骨なところだけ抑えておく。
しっかりできればよいが、時間が足りない人のほうが圧倒的に多いはず、その労力を民法・行政法の精度上げにつぎ込むのが正解。
多肢選択式
過去問対応度 | 中 | |
目標 | 18点 | 75% |
憲法と行政法の穴埋め問題。
国語力で取れるところもある。
特別な対策は必要ではない。
それぞれの科目で目標点が取れるなら、問題なく目標は取れる。
記述式
過去問対応度 | 高 | |
目標 | 30点 | 50% |
出題はほぼ過去の択一から。
〇×がわかるのと書けるは次元が違うように感じるがコツがある。
コツがわかれば、後は穴埋めなので過去問の精度が上がればある程度は書ける。
厄介なのが、書ける=点になる、わけではない。
合格者数の調整弁にもなっている。
基礎知識
過去問対応度 | 低~高 | |
目標 | 24点 | 43% |
24点取らないと、その時点で不合格。
2024年から変更が入るためどうなるかわからない。
できることは、文章と情報の既存分野でいかに得点を稼ぐかに注力するしかない。
悪いことは言わない、予備校系講座の利用を検討しよう
ここまで、基本的な勉強法の話をしてきましたが、思っている以上に試験範囲は広いです。
独学で受からないとは言いません。
予備校と独学は別世界です。
特に理解までの速度が段違いでした。
恥ずかしながら、間違って覚えていたところもありました。
安心して人に紹介できるのが、アガルート入門総合講義/入門総合カリキュラム。
他に資格スクエア行政書士講座(一年合格講座)や伊藤塾(スタンダードコース) もどう見てもかなり良いです。
詳しくは
不安をあおりたいわけではありませんが、本当に何がどうなるかわかりません。
少なくとも易しくなる未来は考えられないのです。
自己啓発であれば、独学が良いでしょう。
半年未満であれば、要点集約型が適しています。
受かるべくして受かる必要があれば、予備校系が最も確率が高い選択なのです。
勉強法は確かに大切です。
ですが、勉強法だけで決まるわけでもありません。
何を・どれだけ・どのようにの「どのように」部分が勉強法。
やり手の人たちは、過去問から「何を」、「どれだけ」必要かを見極めてきます。
さらに自己投資を惜しみません。
行政書士は独学で合格は可能です。
可能ですが、合格の椅子は法学猛者や投資をした人が埋めていきます。
用意されている椅子は10人に1人程度しかありません。
絶対評価は表向きの制度上で、問題の難しさと記述で調整されている世界。
あなたはどうしますか?