あれはゴミの山かですか?
いいえ、宝の山です。
あるアップサイクル(不要なものに付加価値を持たせて再商品化する)に関わる方の言葉だそうです。
ある人にはゴミに見えても、別の人にとっては宝に見える。
視点によって感じ方・考え方は大きく異なるものです。
さて、ゴミ資格だという人もいる行政書士はどうなのでしょうか?
もし、ゴミであれば取得を目指すのは時間の無駄でしかありません。
2~3回受験が多く、かなりの時間を要します。
先に、私なりの結論。
行政書士の資格は、パスポートのようなものだと考えるとわかりやすいでしょう。
海外に渡航の際は絶対に必要。
それ以外で役に立つ場面はあまりありませんが、(国内でも)身分証としても使える。
身分証目的でパスポートを取得するのはあまり利口ではない。
それこそ、保険書や運転免許で事足りる。
身分証としての行政書士はコスパの良いものではありません。
この点でいえば難しいだけで効果の薄いゴミ資格。
1000時間もかけて挑むのは時間の無駄といってもよい。
つまり、見方によってはゴミになりえます。
そして、必須の宝にもなりえます。
二面性は何事にもあるものですが、差がかなり大きいのが特徴。
では詳しく見ていきましょう。
就職・転職の役にたたない、おまけに給料も上がらない。取るだけ時間の無駄。
行政書士の資格は、就職・転職に効果を求めても、大して役に立ちません。
誤解しないでほしいのは、「ない」とは言っていません。
条件や場所次第では「ある」といえます。
実感できるほどの数と条件がない。
かかる時間や努力量に見合った効果は期待できないと考えてください。
就職の役にたたない
就職の役に立たないから、時間をかけて勉強しても時間の無駄になるという話です。
就職が全くないかといえばうそになりますが、概ねないと考えて支障ない。
行政書士は独立開業系の資格です。
もちろん、相当程度の法律の知識を持っている点や、努力を評価されることはあるかもしれません。
とはいえ、採用を決定する重要なポイントにはなりにくい。
加点になる可能性は否定しないが、加点目的で目指すにはリターンがそこまで大きいとは言えない。
それよりも、対人スキルレベルを上げるための努力や自分の強みを見つけることに重きを置いた方がより就職の役に立つのではないでしょうか。
転職の役に立つ?
こちらも就職同様、努力相当かそれ以上の結果を得ることは難しい。
行政書士勘違いあるあるですが、企業内行政書士は現状できません。
この点は司法書士も同じ。
弁護士・社労士は可能とややこしい限りです。
行政書士事務所・行政書士法人で行政書士として雇われることは可能。
この点で就職・転職ができるという話もありますが、絶対数が少なすぎる。
法務転職なら有利になる?
正直あまり効果的とは言えないと思います。
法務転職自体がそもそも厳しいといわれており、司法試験合格者も苦労しているという話も耳にしますので、行政書士で有利かといわれたら……。
給料アップにつながらない
行政書士試験に受かっても給料アップにつながらないから、取るだけ時間の無駄。
そもそも、事前に調べておきましょう。
資格を評価して手当を出す企業は結構ありますが、それがどの程度の額になるのか自社であれば調べられるはずです。
いくら増えるからこの程度の支出でプラスになるとわかったうえで挑むのと、なんとなく増えるかもで見切り発車するのは全く意味が違います。
価値は独立開業できる点。人に評価されるために取ると価値は感じにくい
就職・転職・給料アップのいずれにしても、人に評価されるて初めて効果を感じる点。
この点においては努力のわりにリターンが少ない。
反対に、選択肢を増やすという面で考えるとかなりコスパの高い資格になります。
独立開業できるということは、自力で商売できるということ。
もちろん、誰にでも成功が約束されているわけではありません。
ですが、こと自営で考えるとこれほど低予算で始められ、リスクの少ない業種はそれほど多くはない。
(リスクについて詳しくは割愛しますが、専用の保険制度があります。)
人気の職種といっても差し支えありません。
現に、行政書士の登録者数は過去30年(多少の増減はあるものの)右肩上がりで、令和3年度50.286名(総務省 行政書士登録状況より)と増加の一途。
50.000というのは、セブンイレブン・ローソン・ファミリーマートのコンビニ大手3社の店舗数と同じような数。
また、行政書士の登録に合格後○○年といった制限はありません。
一度受かれば生涯有効です。
定年後に始められる方もいます。
他の選択肢が増えることで、ある意味リストラの恐怖も軽減されたりします。
むしろ、恐れが少なく大胆に行動できるようになり業績が上がる方も少なくありません。
トラブルを法律的に解決できないから役に立たない。
日常的な法律問題を解決できないから行政書士は役に立たないという意見もあります。
できないというか、してはいけない。
弁護士法で弁護士以外認められていません。
例外は少額の場合特定司法書士。
行政書士は劣化版弁護士ではありません。
医師を弁護士だとすると、薬剤師・看護師・放射線技師・理学療法士などが他士業だとイメージしてもらったほうが近いかもしれません。
法律トラブルを解決できる=病気の診察治療行為
では、他の医療系の方々は不要なのかといえばNOですよね。
同じことです。
起きてしまった法的トラブルを行政書士が解決することはできません。
しかし、トラブルを起きないように事前に問題を見つけ、対応しておくことはできます。
予防法務という言葉を聞いたことあるかもしれません。
予防法務分野で活躍している行政書士も多くおられます。
病気にならないための健康指導だとイメージしてもらえばわかりやすいかと。
役に立ちませんか?
試験科目と実務がつながっていない。
試験に受かっても実務に直結しないから、取っても意味がないという話もあります。
なんでこんな話になるかちょっと理解できません。
他の資格では試験に合格すれば実務でバリバリ活躍できるのですか?
調理師になれば、おいしい料理が作れるのですか?
簿記に受かれば会社の決算できますか?
確かに、行政書士試験に受かっても許認可の申請書けるようになるか?と言ったらできません。
行政書士の業務範囲が広すぎるため、実務的な試験問題になっていないのは事実です。
受かってから取扱業務の学習をしなければいけません。
行政書士試験では基本的な法的素養が問われます。
個別の業務を習得するうえでの基礎学力を問われているといってもよいでしょう。
行政書士試験合格は業界への入場券でしかありません。
独占業務という特権の与えられた世界に入るためのただのチケットです。
それ以上でも、それ以下でもありません。
誰でも取れる難易度の低い資格だから価値はない。
難易度が低く、誰でも取れる資格だという方も一定数いらっしゃいます。
先にも触れましたが、法的素養の基礎を問うものであるのは事実です。
八士業(職権で住民票・戸籍謄本の請求が可能な8つの職業のこと、弁護士・弁理士・司法書士・土地家屋調査士・税理士・社会保険労務士・海事代理士・行政書士)の中では難易度が低いのも事実です。
ですが、簡単ではありません。
偏差値の記事でも触れましたが、行政書士試験を無理やり偏差値化すると60ちょっとになります。
これは、概ね上位10%を意味します。
これを簡単だと言える方はよほど優秀なのでしょう。
東大・京大の方がMARCHを「簡単だ、誰でも入れる」と言っている感じでしょう。
行政書士試験は年間5万人が受験して90%が不合格になる試験です。
努力をしても受からない人のほうが多数な試験です。
簡単ではありません。
ただ、やり方と量と効率で誰にでもチャンスがあるのは事実。
収入が大きくなく、廃業率が高いから行政書士は取るだけ無駄。
5年で9割廃業すると言われていたり、
78%が年商500万未満という統計データがあります。
これは行政書士では食えない論争の根拠とされることがあります。
本当にそうでしょか?
5年で9割廃業するは嘘の確率が極めて高い
廃業率は他の産業と比較した場合、かなり低いです。
医療分野ほどではありませんが、それに次ぐ低水準です。
5年で9割廃業という噂はかなりの確率で嘘です。
いずれも、【真実?】行政書士は廃業だらけ?開業しても未来はない?【嘘?】
で詳しく分析しています。
行政書士の収入は低いのか?
年収に関しては、統計データーが根拠ですので、事実といえば事実なのでしょう。
ですが、トリックがあるのです。
看板だけ出している。
他士業との兼業である。
など、必ずしもすべての方が専業で必死に仕事して得た年商の統計ではない。
儲かる人は驚くほど儲けているそうです(億単位)。
反対に、0の方もいます。
両極端な世界です。
こちらの記事で細かく分析・考察しています。
AIに仕事を奪われるから今から行政書士目指しても時間の無駄になる。
AIの進歩が速いです。
AIに仕事を奪われる未来もそう遠いことではないでしょう。
だから、今から行政書士を目指したところで時間の無駄であるという話も出てきています。
20年・30年先はわかりません。
一部を除き、すぐにAIに仕事を奪われる心配は少ないと考えます。
逆に増える可能性もあるのではないでしょうか?
比較的簡単で申請数が多い業務は、AIが代替できるようになるのはそう遠い未来ではないと思います。
ですが、比較的少数で、調査が必要な許認可に関してはAIに変わるまでまだまだ時間がかかります。
- 少数の上、ローカルルールが多いため、学習素材が少ない。
- AIに実地調査ができない。
- 申請する側がAIを上手く使えない。
などが理由として考えられます。
また、技術的に可能だということと、運用が開始されるということは別問題。
法整備も必要です。
どちらかといえば、行政書士側がAIを利用して業務効率を高めていく未来が先に来るのではないかと考えます。
その点で、仕事ができる人に集約して、散らばらずに減る可能性は十分あります。
また、企業がAIを仕事で利用する場合、今後なにかしらの規制がかかる可能性もありますので、新しい仕事が出てくる可能性も否定できません。
AIは恐れるより、味方にする方向で考えたほうが建設的です。
AIと行政書士についてはこちらも参考になるかと
「行政書士がなくなるとか、必要ないとかずっと前から何度も言われている。でも、我々は変化も進化もしてきた。今後も同じこと。」
どこで聞いた話か忘れましたが、この話の印象だけが強く残っています。
その情報で得をするのは誰ですか?
どの資格でも、どの仕事でも、趣味でもいい面と悪い面が当然あります。
- 行政書士はオワコンだ。
- AIに仕事が奪われる。
- ごみ資格だ。
- がんばるだけ時間の無駄。
ネガティブ要素で得をするのは誰ですか?
新規参入が増えると、困る人でしょうか?
または、自分が挫折したから自身の心を慰めるためでしょうか?
ネガティブな話は、足を引っ張ります。
決して楽ではない勉強を長い期間継続する必要があります。
止めたくなる時など、何度も来ます。
その時にネガティブな話は特に響きます。
「ゴミ資格だ・時間の無駄だ」はあなたを挫折されるための、悪魔のささやきです。
- 行政書士は就職の役に立ちます。
- 転職でも法律の知識を評価されるでしょう。
この話で得をするのは誰ですか?
全く評価されないということはないでしょう。
求人はあると思います。
評価もされると思います。
ですが、そこまで数は多くない。
地方によってはないといっても差し支えない。
加点になる可能性はあるが、行政書士試験合格が、採用の決定的な動機につながるとは考えにくい。
行政書士試験に受かったら、どんなメリットがあるのか、知ってから挑むべきです。
1~2か月でどうにかできる資格ではありません。
そして、始めたらどうかやり切ってください。
ごみ資格なのか、時間の無駄であったのかそんなものは始める前と、受かってから考えればよい。
資格はただの道具です。
道具は使い手次第で宝にもゴミにもなります。
役に立つもの事実で、役に立たないのも事実です。
ですが、いま合格を目指して必死に頑張っている人たちがゴミだと聞けば、時間の無駄だと聞けば、辛い現実から逃れたくなるでしょう。
そして、途中で挫折した人たちの一部がまたゴミだと言い出します。
自分が投げ捨てたものが宝であってはならないから。
やがて、ネガティブな声は次第に多く、大きくなってくる。
最後にもう一度言います。
★既に勉強を始めている人たちは、役立つか否かは受かってからにしてください。
決して、止める理由にしないでいただきたい。それは罠です。
★始めるか迷っている人たちは、よく調べてから始めてください。
表に出てこない情報はたくさんあります。
視点の違いで変わってくる情報もたくさんあります。
行政書士業務は単発業務が中心で継続性も安定性もないという方もいれば、継続性があるという方もいます。
月単位で見れば継続性はさほどないでのですが、年単位で見れば更新や変更などで継続性があるといえます。
視点の違いで結論は大きく変わります。