令和になり少し下火になった感じはありますが、まだまだ言われている「行政書士は食えない」説。
理由として、
弁護士でも食べていけない人がいる世の中だ。
行政書士で食べていくことなんかできるわけがない。
弁護士でも無理なのだから、下位資格の行政書士で生きていくなんて自殺行為であるという話ですね。
その根拠として、
- 行政書士なんて廃業ばかりで、まともにやっていくことなんてできねーよ
- 開業しても3年以内に半分以上廃業するって話だ。
- 5年生き残れる人ほどんどいないらしいよ。
という、あいまいな噂話が多々あります。
こんな話を聞くと「やっぱり受験やめよう」
「こんな資格意味ねーよ」と思ってしまってしまいがちになります。
まして片手間で適当に勉強して受かるような試験ではないわけですよ。
苦労して勉強をしていても待っているのは暗い未来じゃ途中で投げ出したくもなりますよね。
でもね、ちょっと待とうか。
○○年以内に○○割廃業してるっていう話は本当なのか?
資料をベースに分析してみたいと思います。
国の資料を基に行政書士がどのくらい廃業するのか調査。
行政書士の廃業率は?
では、行政書士は年間どのくらいの廃業しているのでしょうか?
根拠となるデータ、総務省の統計をもとに分析をしていきます。
総務省は行政書士の監督官庁です。
極めて信頼性の高いデーターあるといえます。
廃業率ってなに?
廃業率とは、その年に廃業した企業÷その年の初めの企業数×100
廃業する割合と考えてもらえばOKピヨ。
行政書士全体の廃業率は
行政書士全体では、
H28:(一年間の登録抹消の合計)1.762人÷(年度当初における登録者)45.441人×100≒3.9
R3 :1.881人÷49.480≒3.8
H28年3.9%
R3年 3.8%
ただし、問題があります。
7条とは登録抹消に関する条文ですが、第一項の二号、これが廃業を申請したものになります。
一項の3号は亡くなったってことなんですよ。
その数H28年284人
R3年288人
必要なのは「食えなくて廃業するのはどのくらいか?」ピヨ。
なので、死亡は除きましょう。餓死でなければですがね。
除いて再計算、
廃業率は
H28年3.2%
R3年3.2%
これは、どうも何かありそうな気がするピヨね。
登録者全体のうち
- 7割近くが試験合格者
- 2割が公員退職者
- 1割が税理士
それぞれで廃業率を出してみると面白いことになりました。
試験合格組の廃業率は?
試験合格組だけで計算してみましょう。
- 死亡は除きます。
- 7条一項一号該当者ものぞきます。
これは欠格事項該当者になります。
要は犯罪を犯したり、悪いことして首になった人たちだと思えばOKです。
破産者の4名だけは加えましょうか、食えないからなのかほかの理由なのかはわかりませんが。
廃業申請したもの
H28年889(破産加えて893)÷年度当初における試験合格して登録した者31.751×100≒2.8
R3年997÷35.535≒2.8(変わらず)
2.8%
公務員退職組の廃業率は?
同じ理屈で公務員退職されてから行政書士として開業されている方の廃業率も計算してみましょう。
退職されているので年齢層が高いはずです。
よって、死亡を含めたものと二通り計算してみます。
- 死亡含む 484÷8790×100≒5.5
- 死亡含まない 414÷8790×100≒4.7
- 死亡を含むと5.5%
- 死亡を含まないと4.7%
税理士兼業の廃業率
税理士が登録している場合の廃業率も同様に計算していきます。
- 死亡含む、4.4%
- 死亡除く、2.9%
行政書士の廃業率は高いのか?
- 行政書士全体で一年間に廃業する人の割合3.9%
- 死亡を除く、3.2%(引退、転職、その他)
- 試験合格組が廃業する割合2.8%
- 試験合格組(死亡含む)が廃業する割合3.3%
- 公務員退職組が廃業する割合5.5%
- 公務員退職組で死亡を除くと4.7%
- 税理士兼業4.4%
- 税理士兼業死亡除く2.9%
亡くなっている人多すぎピヨ。
行政書士の廃業率は他の事業と比べて高いのか低いのか、気になるところですよね。
これも、公的なデータで比較してみましょう。
2017年版中小企業白書概要では全業種での廃業率の平均は3.8%となってます。
[bq uri=”https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/H29/h29/html/b1_2_1_2.html”]最も廃業率が低い業種は、医療,福祉の2.4%で廃業率を押し下げており、最も高い業種は宿泊業,飲食サービス業の6.4%で廃業率を押し上げている。[/bq]
廃業率ランキング
主だった業界の廃業率と比較しながら、行政書士の廃業率を高いものからランキング形式に並べてみましょう。
- 宿泊業・飲食サービス業6.4%(最も廃業率が高い業界)
- 公務員退職組が廃業、5.5%
- 公務員退職組(死亡を除く)、4.7%
- 税理士兼業、4.4%
- 行政書士全体、3.9%
- 全産業平均、3.8%(平均値)
- 行政書士全体(死亡除く)、3.2%
- 税理士兼業(死亡除く)、2.9%
- 試験合格組、2.8%
- 医療福祉業、2.4%(最も廃業率が低い業界)
注)他産業の廃業率は2017年のもの。
補足)令和3年度の産業別廃業率は新型コロナウイルスの影響でさらに大きくなっているものの、行政書士業界は大きな変化はない。
行政書士の廃業率は低い。
全体でみれば全産業含めた廃業率よりやや上回りますね。
ですが、試験合格組の廃業率は、産業全体で最も低い医療分野ほどではないにしてもかなりの低水準だといえます。
亡くなっている方がかなり多い印象ですよね。
高齢の方が多い職種であると容易に考えられます。
となると、廃業の理由も高齢による引退が多数含まれていると考えて間違いないといえます。
試験に合格して開業した場合廃業率は社会全体の業界からみても、かなりの低水準である。
行政書士廃業者の中に多数の年齢を理由にした引退も含まれていると推測できるため、食えないから廃業の割合が高いという根拠は一切ない。
と言っても、私が開業して生き残れるかは別の問題。
あなたが開業して生き残れるかも別問題。
あくまで全体としてみた時に廃業まみれではない。
廃業率9割ってどこからきたの?
じゃあ、○年以内に〇割が廃業するってどこから来た話なんですか?
デマぴよ?
ひどい話だと、新規登録者を廃業者で割っている。
これとんでもない話で、具体例をあげてみると、
「A社では今年定年退職で10人辞めました、そして10人の新入社員が入ってきました。A社の退職率は?」
100%なわけがない。だれが仕事するん?
サラリーマン長年していると肌で感じますよね。
同期が何人も転職していく、上司が定年で退職していく、新人が一年経たずに辞めていく。
ある程度の規模の会社勤めだと誰しも見ているはずです。
退職するのは新人だけではない。
行政書士の世界も同じはずなんです。
新人しかやめない業界などない。
しかし実際はこんな雑な話が廃業率9割説がまことしやかにささやかれているのです。
もし、本当に9割廃業するとしたら
廃業率9割がどれほどぶっ飛んだ話か試してみましょう。
- 全体で新規に登録する人が2500人だとしましょう。(年度により多少の差はあるものの大体似たような数字です。)
- 3年後に半分、5年後に9割廃業すると仮定したら
- 3年後に1250人に
- 5年後に250人残っている計算になります。
めんどくさいので、生き残る人数を適当に
- 一年目2500(登録初年度)
- 二年目2500(あり得ないが、廃業0)
- 三年目1250(3年で半数の半数)
- 四年目1250(あり得ないが、廃業0)
- 五年目250 (5年で9割廃業の9割減)
- 以後ずっと250人
絶対あり得ない。
- 1~5年の総数、7750人
- 5年目以降250人
さて、行政書士登録人数の4万5千人になるには一体何年生きればよいのでしょう?
ざっと、開業してから149年ほど。
もちろん、誰一人死んではいけません。
平たく言うと、根拠のないデマであるといっても差し支えありません。
一般企業においては10年生存率が1割だという話は確かにあります。
ですが、それは倒産しているからだけではなく、事業譲渡や吸収合併等も多く含まれていることも忘れてはいけません。
雑音など気にするな。
この記事をここまで読んでくれているということは、行政書士の資格取得か開業に少なからず興味を持っているということですよね。
ネットで行政書士は廃業まみれだと聞いて、あなたはどうしますか?
受験をやめますか?
開業をやめますか?
それはあなたの自由です。
ですが、その情報が本当に正しいのか否か考えてからでも遅くない。
根拠がどこにあるかわからんような雑音でやりたいことを足踏みしてしまう。
勉強をやめる理由にしてしまう。
それも自由だ。
だけどそれでいいの?
能天気で考えなしに開業するのもどうかと思うけど、
必要以上に不安を煽るものを信じる必要もない。
廃業率が極めて高いから、「うちのコンサルうけませんか?」って話になっていくわけです。
不安を煽るのは戦略ではありますが・・・・・・。
行政書士の廃業率は高いどころか極めて低い。
全産業と比較しても相当低いレベルであるということは数字が語ってくれています。
ただ、一つどうしても気になることがあるとしたら、
死亡者多すぎませんか?
命狙われる仕事なのか?
過労死あたりまえでブラック企業よりブラックな漆黒職業なのか?
おそらくは超高齢化してるだけでしょうけどね。
それでも、引退なしで死ぬ間際までやれる「生涯現役」を絵にかいたような仕事ですよね。
補足)平成28年から令和3年の間で、登録者総数4.000人ほど増えています。
そして、見てきたように廃業率に大きな変化は見受けられません。